日本機関紙協会埼玉県本部 芳野政明
Aさん、お手紙ありがとう。久しぶりの懐かしい筆跡を目で追いながら、十数年前に出会ったあの頃の奮闘ぶりが、脳裏によみがえってきました。
手紙の主旨は、「こんど機関紙づくりをするハメになった、これまで経験がなかったので、何を、どうしたらいいかわからない。編集・製作の基本的な考え方と技術について、アドバイスしてほしい」という主旨でしたね あなたが機関紙担当になり、この私を思い出してくれて嬉しく思います。
なにごとにも誠実なあなたが、機関紙担当者になったことを皮肉ではなく、「おめでとう」といいたいのです。いいチャンスに巡り合ったこと、自分の「幸運」を前向きに受け止めてほしいと思います。少々不安げなようすでしたが、あなたなら大丈夫です。
Aさんが、自から「よし、このさい文章力や編集力をものにしてやろう」という、チャレンジャーの気持ちで、機関紙づくりにまい進されることをおすすめします。そのことでまた新たなスキルが自分に加わり、能力の幅を広げ、さらなる飛躍になると思うからです。
新聞づくりは、江戸前期の「かわら版」以来約四百年にわたる新聞編集で積み上げられてきました。また、私たちの機関紙の源流は自由民権運動のなかで展開された言論活動にさかのぼります。以来百三十年のあゆみと蓄積に学びながら、機関紙を製作することになります。自分たちの個性をだいじにして製作しながら、企画や記事など編集力を身につけていってほしいと思います。やはり一定の経験がものをいう仕事であることは確かです。その体験は、オーバーではなく「生涯の財産」となる知的生産の手段をわがものにすることでもあります。編集という作業は、新聞づくりだけでなく、生活や仕事のさまざまな分野に活用できるものです。
いま、「文章が書けて新聞がつくれるようになった自分」を想像してみてください。ステキだと思いませんか!
ただし機関紙編集は、しかたなく受け身でやっていては向上しません。意欲的・挑戦的にやっていくなか、よその機関紙・広報紙などいいと思うものから“盗んだり”、“学んだり”して、編集力量は向上していくものだと思います。
そこで、あなたの要請にこたえて、新聞編集の基礎を、私自身が先輩や編集者仲間から学んできたことに、自分の経験を加味しながら、考え方や技術について少々述べてみたいと思います。題して「芳野政明のやさしい新聞編集教室」とでも名付けておきましょう。
以下の連続講座は、Aさんのようにこれまで新聞づくりを経験したことのない方々を頭に描きながら、新聞製作の工程にそって、基本的なことを書いてみたいと思います。内容は、次のようなことが柱になります。
の6項目について、できるだけ実践的に、しかも簡潔に述べるようにしていきます。Aさんの参考になればいいと思うのですが…